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2008.07.13

網羅的PCR法

昨日は虎ノ門病院で小児科の勉強会。病院、クリニックなどから症例を持ち寄って、ここで失敗したとか、ここを見逃したとか、そういう事も話し合える気さくな勉強会である。主に病院の若手が症例を呈示するのだが、今回は症例以外に講演が一題。講師は北里研究所の中井先生。感染症がご専門で、こんど都立駒込病院にうつられるそうである。

「網羅的PCR検索法による血清診断および培養検査によって推定された市中肺炎例の起炎微生物:抗菌薬療法の適正化を目的として」というのが演題のタイトル。
この「網羅的PCR検索法」というのがスゴイ。肺炎と診断された患者さんの上咽頭のスワブ(鼻の穴から綿棒を突っ込んでのどの奥をごしごしするアレです)から、PCR法で細菌やウイルスの遺伝子の断片を検索する。現在のシステムだと細菌は肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、マイコプラズマなど6種類、ウイルスがインフルエンザ、パラインフルエンザ、RS、アデノ、ライノ、ヒューマンメタニューモウイルス、ボカウイルスなど13種類が1時間半で検出可能だという。上咽頭の細菌やウイルスを調べているのでそれがすべて肺炎の原因とイコールかどうかはわからない。しかし、病原体は直接肺に飛び込むわけではなく、必ず鼻や咽頭を通って入ってくるので密接な関連があることは確か。中耳炎の起炎菌も上咽頭の細菌培養で判断する。
私たち市中のクリニックでは肺炎と診断しても、なかなかその原因にたどり着けない。今のところ、原因診断できる可能性があるのは、インフルエンザ、RSウイルス、アデノウイルスくらい。マイコプラズマの迅速診断もあるけれどこれは感度も特異度も問題あり。なので、肺炎とか気管支炎と診断しても大まかに「細菌性の可能性がある」とか、「ひょっとしてマイコプラズマかも」くらいまでしか診断ができない。
そういう状況では抗菌薬は「何でも効いちゃうセフェム系」とか「念のためにマクロライドも」とかの選択になりがちである。1時間半で肺炎の起炎菌がわかる(推定できる)というのは革命的である。血液の迅速検査なども併用するだろうから、その場で必要な抗菌薬を絞ったり、使わなくしたりできるということである。
この診断法はどうも大変な費用がかかりそう。「網羅的」というのは、片っ端から調べりゃ頭使わなくても診断がつくよ、ということで、診断プロセスから知的作業が抜け落ちるきらいもある。でも、こういう診断システムが整備されたら、肺炎の治療も変わることは間違いないだろう。

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