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2008.06.24

麻しん?!

ある保育園のゼロ歳児クラスで麻しんの患者が出たという情報。ゼロ歳児で麻しんとは聞き捨てならない。相談に来た同じクラスの子の母親や保育園から情報収集する。

ゼロ歳児クラスの子たちが接触した可能性のある日は限られていて、発端者(IndexCaseという)の発熱1日目と解熱した5日目。発端者は2日目から4日目までは欠席していた。1日目にウイルスに暴露されたとすれば相談を受けた日(麻しんと診断された日)は8日目にあたりもう発症寸前である。何もできない。1日目には暴露をまぬがれて5日目にウイルスに暴露されたとすると相談を受けた日は暴露4日目。ワクチンが発症予防に有効な72時間は過ぎているが、ガンマグロブリンなら6日目まで有効とされるからこちらならまだ間に合う。と言うことで、とりあえずガンマグロブリンの手配をする。
ただ麻しんだとすると1日目に暴露されている可能性が高いので、ガンマグロブリンを注射する前にもう少し情報を収集することにした。それでわかったこと。
麻しんを発症したとされる子どもさんは、5月に麻しん風しんワクチンを接種している!
保育園で発熱して翌日から休んでいたが、熱はあっても咳鼻水・目やになどのカタル症状はなかった。
解熱して元気になったので保育園に出てきた。解熱した翌日から体中に発疹が出てきた。
発疹が出てからの再発熱はなかった。発疹は消えつつあって色素沈着を残しそうにない。
麻しんの患者はその子の周辺にはいなかった。ゼロ歳・1歳の子どもが麻しん流行の発端者になる可能性は少ない。普通はその近くに患者がいる。

ここまでわかったところでほっと一息ついた。
おそらくこの麻しん疑いとされた子どもは麻しんの可能性は低い。突発性発疹など他のウイルス性発疹症の可能性がたかい。血液製剤であるガンマグロブリンを使って発症リスクを押さえる方法が有効である確率は低い。
麻しんワクチン接種後の非定型的な麻しんではないかという考えもあるのだが、ワクチン接種後の二次性ワクチン不全(SecondaryVaccineFailure)が接種後1ヶ月で起きることは考えにくい。あり得るとしたら1次性ワクチン不全(PrimaryVaccineFailure)(ワクチンを接種したがつかなかったということ)であって、これなら軽症の修飾麻疹ではなく普通の麻しんを発症するはず。
ということでアームチェア・ディテクティブならぬアームチェア・クリニカルカンファランスは一段落した。
私の結論が正しいかどうかはもう少し時間が経たないとわからない。問題なのはどうも患者さんは麻しんの抗体検査がなされていないらしいこと。これでは答えが出ない。麻しんの全数把握報告は「疑い」の時点でしてかまわないのだが、その場合は必ず確定するための検査が必要である。
最期に、ホットな話題を材料にしたので個人情報保護の上で問題があるようならご指摘いただきたい。

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