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2006.05.19

アデノウイルス感染症のあれこれ

咽頭結膜熱(プール熱)が過去10年で最大の流行という新聞記事が出たのは少し前。だがクリニック周辺では咽頭結膜熱はそこそこあるものの大流行とはほど遠い実感がある。これには、少々訳がある。

アデノウイルスは多彩な症状を呈する。血清型で分類される型が51種類もある。
眼にきて流行性角結膜炎(はやりめ)をおこすもの。目と喉にくる咽頭結膜熱。肺炎をおこす重症型。のどだけにくるアデノウイルス咽頭炎。下痢嘔吐をおこす胃腸炎型。出血性膀胱炎をおこすもの、など。
咽頭結膜熱はアデノウイルス1〜7型、とくに3型が多いとされているが特にこの型と決まったものではない。咽頭炎だけのタイプと原因ウイルスはオーバーラップしている。同じウイルスが原因でも、眼とのどにくるタイプとのどだけのタイプで病名が違っている。症状が違っていれば病名が違ってもかまわないのだが、困るのは感染症発生動向調査の報告をどうするかだ。アデノウイルスが迅速検査で簡単に診断できるようになってアデノウイルス感染症が意外に多いのに驚いた。それを「咽頭結膜熱」として報告してよいのかどうか。当初クリニックではアデノウイルス陽性の咽頭炎は結膜炎がなくても「咽頭結膜熱」と報告していた。これで報告数は急増した。ところが、あちこちの情報を総合すると「咽頭結膜熱」の定点報告は「発熱・結膜充血・咽頭炎」の3症状をもつものに限るらしい。それに従うと「咽頭結膜熱」は激減する。おそらくここ数年の「咽頭結膜熱」の急増は迅速検査で診断された「アデノウイルス咽頭炎」が「咽頭結膜熱」として報告されるようになったからだろう。そして、多くの定点では眼の症状を伴わないものも「咽頭結膜熱」と報告されているのだと推測される。
本来発生動向調査の目的は「咽頭結膜熱」を見るのではなくアデノウイルス感染の上気道炎の頻度をみるものだったはず。そのころは迅速診断なんてなかったから診療所レベルで診断できるアデノウイルスの上気道炎は「咽頭結膜熱」しかなかった。それで報告項目が「咽頭結膜熱」になっただけの話だろう。検査の水準が変われば診断基準も変わる。統計もそれに応じて変えるべきだろう。でないと、毎年過去10年で最大の患者数を更新することになる。
それと、学校での扱いが「咽頭結膜熱」と「アデノウイルス感染症」では違うことも問題。「咽頭結膜熱」なら「出席停止」だが「アデノウイルス感染症」なら「病欠」の扱いになる。これでは不公平なので、私の所では全部「咽頭結膜熱」という治癒証明書を書くようにしている。

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